ケントが死んでしまって3日目の夜。静かな穏やかな夜。元気に家中を走り回ったり、悪さをしたり、扉をタコ殴りしていた頃のケントを思い出すと悲しい気持ちに襲われ(仕事しなきゃ)と筆を取るという時間を繰り返している。ゆっくり、じっくり、悲しむことを私は避けている。
(大人しくて優しい犬です)
保護犬の譲渡サイトでケントの写真を見た時、なぜかとても心に引っかかるものがあって、サイトを閉じては、またケントを見に行ってを何回か繰り返していたことも懐かしい。
(大人しく優しい犬です)
確かに、我が家に来て数ヶ月後にはそうなってくれたんだけど、引取先の県外にケントを迎えに行って、その日に私も家族も噛まれたのも今となっては(詐欺譲渡!!)と笑い話にできるけど、その時は私の頭の中は結構真っ白になっていた。そりゃそうだ、本噛みするし、誰もさわれない犬を引き取ってきてしまったんだから。どうするよこの状況って。
玄関で唸り散らしたり、引き戸をこじ開けようとしているケント。床を歩き回る爪の音が、バイオハザードのゾンビ犬のようで夜寝るのも怖かったことも笑い話だ。
玄関に潜伏している噛む犬。人間の私たちは玄関から出れず。しかもガラス扉だった玄関扉は配達員さんが来るたびにケントがけたたましく怒り狂うので、台風が来るわけでもないのに玄関扉に大きな板を立てかけ外からも封鎖。
ゾンビの襲撃から身を守る家のように。ゾンビは家の中にいるのに、どうゆうこっちゃ。
保護した手前、私も意地になっていたんだと思う。子供の頃から(狂犬)と噂される犬とは、いつも打ち解けて触れるようになっていたこともあって。
(あんたも怖いんだろうけど、私も怖いんだよ!噛むなよ!絶対に噛むなよ!)
と何百回も言いながらどんどん距離を縮め、1週間後に撫でさせてくれた時の感動は涙もんだった。大好きだった飼い主に捨てられ、里親先で虐待され。
人間の勝手な都合に振り回された犬だった。
それを知ったのは我が家に連れてきてからだ。本当に酷い話だ。
そりゃ噛みたくもなるわ。私がケントの状況だったらケントより人間を噛みまくるだろう。
そんなわけで、私が想像していたワンダフルライフは違った形のワンダフルライフへと急遽変更となった。
1人の人間しか触れない犬との生活。
それは本当に想像以上に大変だった。お座りも待てもできない犬。引き取りに行った時は大きなタライのようなものに、おやつだけがどっさり入っているものが置いてあって、私はそれにも唖然とした。
しつけという言葉をあまり使いたくないけど、それが全く身についていない犬だった。
ドッグトレーナーさんに依頼し自宅に何回か来てもらい、お座りも待てもできる犬へとなった時の感動も昨日のことのように覚えている。
一緒にいる人間次第でこうも犬は激変するのか…と驚いた。
散歩中は歩行者や散歩中の犬に噛みつかないように気をつけながら、まるで姿を確認できないストーカーに警戒しながら歩くような散歩だったし、ドッグランなんて夢のまた夢。
散歩中に(かわいい犬)なんて言いながら近づいてきた人に、落ち着いて(ありがとうございます)なんて夢の夢。
この6年近くで1番私が心配していたことは
(私は倒れたり病気になったりできない)
ということだった。私しか触れない犬なので、人にお願いします。と預けたりなんてできるわけがない。
約6年と短い期間しか一緒にいれなかったけれど、私は大きな役目を果たせたようで、物凄く悲しいけれどホッとしている気持ちも大きい。
ケントが来てから私の生活と人生はケント軸へと変わった。まるで赤子との生活が急にやってきたかのようだった。
私の行動や目標としていたこと、多くを変更し諦めてきた。噛む犬だからといって、他の誰かに引き渡す。それだけはしたくなかった。
最後まで一緒にいてあげたかった。
この家もケントのために住み続けていたようなもので、人生の大きなターニングポイントをまた迎えている。どうしようかね、これからの私の人生。
ケントが虹の橋を渡ってからの生活や生き方を、うっすらとは思い描いていたけれど、実際にいなくなってしまうと、そう簡単にはアクセル踏み込んで。とはなれない。
悲しむことを避け続けていても、心は大きな変化をまだ求められない。
41歳。挑戦できないことなんてないまだまだ無敵な年だ。
考える時間はたっぷりあるし、ゆっくりと、自分らしく生きれる次の段階に進もうと思う。
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